2009.08.23 Sunday
プロジェクトファシリテーション
たっぷり汗の染みこんだ、会社変革の私小説
表紙を見るとおしゃれな感じがするが、開いて読もうとすると、ギャップに苦しむことになる。それというのも、この本は表題の「プロジェクトファシリテーション」の効果的な方法、スマートな方法、かっこいい方法をマニュアル的に示したものではないからだ。
この本を一読して私が感じたのは、汗の臭いである。といっても高校野球のようなさわやかな汗というよりは、スーツとワイシャツに染み込んだ、もしかしたら加齢臭もちょっと入っているかもしれないような、そんな日本の正しい戦うサラリーマンの汗だ。ぶっちゃけ、会社を変革するなんて、そんなにかっこいいものではない。
表紙を見るとおしゃれな感じがするが、開いて読もうとすると、ギャップに苦しむことになる。それというのも、この本は表題の「プロジェクトファシリテーション」の効果的な方法、スマートな方法、かっこいい方法をマニュアル的に示したものではないからだ。
この本を一読して私が感じたのは、汗の臭いである。といっても高校野球のようなさわやかな汗というよりは、スーツとワイシャツに染み込んだ、もしかしたら加齢臭もちょっと入っているかもしれないような、そんな日本の正しい戦うサラリーマンの汗だ。ぶっちゃけ、会社を変革するなんて、そんなにかっこいいものではない。
この本は古河電工という、老舗なんだけれども一般にはあまり馴染みのない会社の人事部門のBPRのプロジェクトの遂行の記録である。
BPRというのは、ビジネス・プロセス・リ・エンジリアニング。まあ、要するに業務改革だ。これがなぜだか日本ではソフトウェアベンダーの飯の種になってしまって陳腐化した言葉である。その結果、今、社内でBPRと言ってもなかなかプロジェクトが通らない、そんな苦々しい思いをしている方も多いだろう。しかし、業務改革は世の中が変われば絶対に必要だ。
古河電工はネットで調べると、光ファイバー・電線・非鉄金属のメーカーであり、電線御三家(住友電工・古河電工・フジクラ)の一角。業界2位。(Wikipediaより) しかし、電線御三家という言い方がまた古い(笑。つまりはインフラ系のメーカーということだ。明治29年創業というこの会社、何で人事部門に改革が必要だったかと言うと、この本の51ページを読めば、訊かなくてもわかるだろう。コンサルタントである白川が、本社の人事担当者に何気なく、古河電工グループの社員数を訊いたところ、「去年の株主総会時点での数字」を「2〜3日かけて調べ」ないとわからない、という答えだったのだ。こりゃダメだ。効率化の必要云々というより、組織としては恐竜と同じ、ホメオスタシスが働いていない、ということだろう。
しかし、そもそも、改革が必要なことなことくらいは誰にでもわかっているのだ。問題は、誰が、どうやってそれを実行するのか、完遂するのか?ということである。で、これは、綺麗事ではなく、とても泥臭く人間臭い、そして結果として汗臭い話になるわけだ。
かつてコンサルタントというと、かっこいいスーツにかっこいいカタカナ用語を使い、高いフィーを使ってコンテンツを売り込んでくる、というイメージだった。いまだにそれが忘れられず、海外から高額の費用を出して外人のコンサルタントを雇用している会社もあるという。しかし、最近、特に日本の小さなコンサルティング会社は、大きな組織の中で、改革の必要性はわかっているんだけれども組織の慣性の強さに逆らえずにどうしようもできない、という人をサポートしている例が多いように思う。所詮、外部なので、言いたいこと言えるし、仕事だから絶対に最後までやる、やりとげる、というコンサルタントと、社内の人間と、二人三脚でやりませんか、というのが、この本のようなケースである。そこで使われる手法はカッコよかったり、最先端であったりする必要はない。ただ、その会社に今、必要な手助けをするということだけだ。
というわけで、プロジェクトマネジメントではなく、プロジェクトファシリテーションだ、というのがこの本の主張。人事部門のBPRのこのプロジェクト、何と5年もかかったというのだから驚きだ。我慢強さというか、粘り強さというか、ネットの世界に生きている私のような人間から見れば、それだけで尊敬することしきり、であるが、しかし、大きな古い会社を変えようと思うと、それだけの時間をかけることは必要なのかもしれない。(もちろん、予算の問題も大きいと思うけれども。
エピローグからマニュアル的に振り返ることもできるように、おそらく編集段階で工夫されてはいるものの、この本の中身は、ノンフィクションのドラマであり、私小説のような物語だ。だからおそらく、この本に書かれているノウハウは、そのままではあなたの会社の役に立たないだろう。しかし、マインドというか、気持ちというものはあなたが会社を変革するのに役立つかもしれない。そして今、変革を必要としてない会社・部署など、日本には、特に日本の大企業には、ほとんどないと言って間違いではない。
惜しむらくは、この本がそういう「物語」であるとすると、冒頭に人物紹介が欲しかった。賢明な読者の方は、カバーを外し、表紙の折り返しにある関さんと白川さんの顔写真とプロフィールを読みながら、ああ、コイツがしゃべっているんだな、と、想像しながら、この本を読んでみてはいかがだろう。会社変革のドラマが、そこにはあるのだということが、わかるのではないだろうか。そう、5年分の汗の臭いが、この本には染み込んでいる。
私たちの本をご紹介いただき、ありがとうございます。
>綺麗事ではなく、とても泥臭く人間臭い、そして結果として汗臭い話になる
汗の臭いですか・・。私たちが実例を本に書き起こすに当たって、心がけていたのは、
「プロジェクトの実際を、脚色なしに、ありのまま伝えよう」と言うことでした。
実際のプロジェクトが汗臭いものでしたので、それが伝わったのであれば、
嬉しく思います。(加齢臭含む、は微妙な心境ですが)
>冒頭に人物紹介が欲しかった。
これについてはチラと考えましたが、登場人物全員が本人なので、照れくさく、
やらなかった、というのが正直なところです・・。
すこし不親切だったかもしれませんね。ご指摘ありがとうございます。