bizbook.tv

ビジネス書評の小宇宙 bizbook.tv へようこそ。
星の数だけ、人の数だけ、ビジネスの叡智がある。
aguni's BOOK SPACE

<< August 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

<< 会社は頭から腐る あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」 | TOP | 星の王子さま 新版 岩波少年文庫 >>

2009.03.02 Monday

ワーキングプア 日本を蝕む病

で、不景気っていつからさ?

 2006年の7月と12月に放送されたNHKスペシャル「ワーキングプア〜働いても働いても豊かになれない〜」「ワーキングプア2〜努力すれば抜け出せますか〜」の取材を基に、数多くの実例を紹介するノンフィクションです。今回は今さら読んでいただきたい一冊として取り上げます。

 今、金融危機の影響で派遣切りだのが問題になっていますが、影響がいちばん少ないとか言われていた(もしくは、政治家の皆さんが言っていた)日本には、貧困や下請といった経済の下部の部分にかなり影響が現れているようです。


 しかし、確かに表面化しているのは今かもしれませんが、徐々に崩れていく日本の安心安全な社会というものが、表の社会のすぐ裏にまで忍び寄っていることに、あまり我々は無自覚だったのではないか、と思えます。

 この本によると、2005年の国税庁「民間給与実態調査結果」によると、全給与所得者の5人に1人は年収200万円以下。女性だけに限定すると200万円以下の割合は約4割。年金をもらえない高齢者は約44万4000人。家賃が払えずに漂流する若者。増え続ける児童擁護施設出身の子ども。

 この状況は過去の状況。ということは大人は老いて老人となり、子どもは若者になっていき、若者は大人になっていくのです。事態は進行しつつ、影響は増大していく、ということなのでしょう。

 これはネットで見たある記事ですが、日本の貧困の問題について開かれたシンポジウムにおいて、ある専門家の方に参加者が「余裕がなくてゲーム機を買ってもらえないで仲間はずれにされている子どもの問題も貧困なのか」という問いに対して、それも日本の貧困の問題に入る、と言ったのがショックだった、というのがありました。質問者も回答者も、どちらも貧困の現実的な問題を知らずに随分、のんきなことだなぁ、と思いました。

 貧乏が悪いわけではありません。そこに向けられる差別。あるいは搾取。そういうものが結果として貧乏ではない人たちの生活を支えている。そういう構造こそが問題なのです。

 例えば安い賃金。これで実現しているのは安い労働力による安い商品やサービスです。それを享受しているのは他でもない私達です。こうした構造の中に、日本の貧困の問題は埋没し、見ない振りをされてきたのでしょう。

 ボランティアやセーブ・ジ・アースとか、フェア・トレードとか言いますと、なぜかすぐに海外の貧しい子どもとか、薬が無くて死んでいる事実、というのがまことしやかに宣伝されています。前にこの欄でも紹介した『ヤバイ経済学』にもあったように、なぜ、それらがあなたの目に見えるのかといえば、それで利益を得る人がいるから、なのです。

 一方で、親の貧困の問題で国民健康保険に入っておらず、まともに病院にかかれない子どもがこの国には居るのです。あまりの低賃金に睡眠4時間で生きている女性がいるのです。死ぬまで働き続けなければならない老人がいるのです。しかも、それは彼らがサボっていたからそういう状況になったのではありません。派遣切りの問題でも露呈したように、今の日本の社会システムが、彼らの存在を必要としているのです。

 NHKの番組とこの本によってメジャーになったワーキングプアーという問題。どこか江戸時代の身分制度にも似て、日本社会の闇の深さについて、考えざるを得ない問題です。そう考えると、なぜこの本の副題が「日本を蝕む病」というものなのか、自然とその奥深さに考え込んでしまいます。

 目を背けるのか、考えるのか。日本人のうち、そのどちらの数が多いのかによって、状況は変化する、と信じたいものです。


コメント

コメントする









この記事のトラックバックURL

http://blog.bizbook.tv/trackback/934026

トラックバック

▲top