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2009.03.08 Sunday

星の王子さま 新版 岩波少年文庫

ほんとうに大切なものは目に見えない

 ここのところ、企業経営とか働くことの在り方などの話題、あるいはコミュニケーションやマーケティングについて考えたり話したりする機会が多い。そんな中で自分の頭のどこからか、「ほんとうに大切なものは目に見えない」というフレーズが浮かんできました。

 ネットで検索したところ、この言葉は『星の王子さま』の中で、キツネが発言したものだということはわかったのだけれども、はて、どういう話だったのかがさっぱりわからない。実際、周りの大人に聞いてみても、このストーリーを覚えている人というのはなかなか居ません。


 ということで、今回は、この『星の王子さま』をビジネス書として読む、という荒業に挑戦してみることにしました。

 カンタンに言えば、ひとり飛行機に乗っていたパイロットの主人公でアフリカの砂漠に不時着。そこへ、小さな星からやってきたという男の子が現れ、会話を交わす。そして一緒に井戸を見つけ、飛行機の修理が終わると共に別れて、おしまい、という話。

 その中にまぎれて、本当は絵描きになりたかったのにまわりの大人に笑われてしまって断念した主人公、愛すべき花を置き去りにして地球まで来てしまった星の王子さま、自分の価値観でしか物事を見ない天文学者会議の話、王子さまが出会う、王さま、うぬぼれ男、呑み助、実業屋、点燈夫、地理学者のエピソードが挿入されます。そしてこれらの変な人たちがいっぱいいるのが地球、というわけです。地球では、謎めいたことばかり言うヘビ、スイッチマン、丸薬商人、そして、この物語のキーとなる「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」というせりふを言うキツネがいます。

 実はこの物語は、このキツネのせりふからガラリと変わります。つまり、主人公も王子さまもそして読者も、それまでに読んできたもの、見てきたことが表面だけのことであり、目に見えない奥があるということに気づかされるのです。

 後半は前半の明るいムードとは違い、後悔や悲しさで満ちることになります。元の星の、花のところに戻りたい王子さま、生き残ったものの、王子さまを失って悲しむ主人公。ハッピーエンドでありながら、見えない大事なものをおろそかにすると、どんなに後で悲しい思いをするのか、ということを、体験させるような物語になっているのです。

 さて、この物語の著者、サン=テグジュペリは、飛行機に憧れ、何度も死線をくぐり、禁止高度まで飛行機を飛ばす航空大尉となり、最後には地中海の戦線で姿を消したという不思議な人物です。不景気とファシズムによって世界が戦争に突入している1943年に、亡命先のアメリカで、この本は挿絵も自分自身が書いて出版されました。

 おそらくこの物語を読みながら感じるのは、空と死を追いかけ続けた作者の独特の境地です。表面的なストーリーは主人公の事故からの生還ということで、ハッピーエンドなのですが、そこには「本当に大事なものは何なのだろう?」ということを純粋に思い描き、この地球から去ってしまった王子さまとの別れの方が、読者の胸に残ります。

 おそらく事実というものは変わらない。しかし、何をどう見るかによって、物事というのはどういう風にでも見えてしまう。そして、目に見えるものだけを信じたり大事にしてしまうと、本当に大事なものを見失ってしまう。なぜなら、本当に大切なものは目に見えないのだから。

 この本に込められた、何度も死を前にした著者のメッセージ。もしかしたら、金融危機や経済不安に煽られた今だからこそ、大人が大事にして、子どもや若者に伝えるべきメッセージなのかもしれません。


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