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2008.08.24 Sunday

法廷会計学VS粉飾決算

日本は粉飾決算大国なのか?

 最初に戸惑ったのは、この本がコラム集のような構成になっているからだ。どこかに連載されたのかと思えば、個人的にレポートとして発表したものらしい。

 実は最初に掲載している日興コーディアルグループのベル24買収劇についてのレポートが話題になり、粉飾決算が明らかになるきっかけを作ったという。

 この本で比較されているのは、マスコミで話題になり、日本の株価を暴落させたライブドア事件だ。

 専門的な記述を除いて簡単に言うと、日興コーディアルグループが、何の関係もない、コールセンター業務の会社、ベル24を、その買収目的だけのために作った会社に買収させ、これを連結決算の対象外におき、お金を還流させることによって、自社の利益を消してしまった、というもの。真面目に事業をやっていた会社を利益を消すためだけにいじくるなんて、言語道断である。


 ここまで書けば、ライブドア事件も同じような構造にあったことにお気づきになられるかもしれない。ライブドア事件の場合には、この買収益を売上に付け替え、あたかも儲かっているフリをして株価を吊り上げた、ということだった。

 著者の分析によると、日興コーディアルグループも同じであった。というか、もっと巧妙だった。デリバティブの手法を用いて、株価の吊り上げをしつつ利益を捏造。さらにTOBを用いて上場廃止にしてしまうという荒業。しかも、こういうことは常態化していたと、社内レポートまで出ているそうだ。

 ちなみにこの事件の影響で、監査法人がひとつなくなった。でも、検察が動いたわけでも、日興コーディアルグループの幹部が逮捕されたわけでもないので、一般的にはあまり知られていない。

 問題は、金額である。ライブドアの粉飾額は、80億円と言われていた。一方、日興コーディアルグループの、この件に関する粉飾額は、314億円。なんじゃこりゃ、という数字である。ちなみにこういうカラクリで儲けたお金は個人へのボーナスに反映されるそうで、これも偽装が常態化していた理由のひとつかもしれない。

 結局、日興コーディアルグループは米シティグループの傘下に入ってしまい、真実は藪の中。まったく日本というのは不思議な国である。

 さて、この本では他にもいくつかの会社が取り上げられている。話題になった(割にはあまりたいした金額ではない)NOVAの事件。そして、いまだ事件化していないが、粉飾が常態化している日本航空である。(詳細は本書を読んでいただきたい。

 この本を読んで感じたことはいくつかある。まず、日本では管理会計が何たるか、その意味や価値が理解されていない、ということである。いかに数字をごまかして税金を安くするかを考えている中小企業。あるいは、いかに架空の売り上げを立てて融資や仕事を取ろうとする建設会社など。大企業は大企業でメンツを守るために粉飾し、政治家やマスコミは広告費や接待で骨抜きにされている。そもそも、赤字の日本航空が株主優待を出すだけで、違反しているのだ。

 この本に書かれていることが本当なら、なんじゃこりゃ、という感じである。しかも数字の根拠も論理の展開も問題ないとなれば、空恐ろしくなる。

 一方で、公認会計士が逮捕される、責任を取らされるという事件も増えている。薄給で頑張っている彼らの背後にせめて社会正義の看板でもあげないと、会計制度そのものが崩壊しかねない。

 いや、この現状、もう実際には崩壊しているのかもしれない。

 もうひとつ、日本の警察あるいは検察の問題である。会計手法が複雑化していく一方で、現場がついてきていない。ライブドアのように「一般市民」の株主みたいなわかりやすい被害者がいると動く。しかし、投資家としての責任はどうなんだ?という気もする。

 ところがどんなに不正で会計的に悪質であっても、被害者が見えないと検察は動かない。で、動いた場合には、わかりやすい事件にしようとする。本当の事件は、嘘をついて騙し取った、というレベルではない。粉飾するつもりで、大きな数字を作り出したところが問題なのである。

 会計も税務も法律である。しかし、それに司法が追いついていない。そんな印象。

 ただし救いは、経験と知識があれば、誰にでも上場企業の粉飾は見抜ける、ということである。そこが会計の面白いところでもある。もちろん、簡単には見抜けないようにするから粉飾なのであるが、見抜くヒントなら、この本にだっていくつか書いてある。

 もし、企業の決算に粉飾が前提であるのなら、いつか真実の姿がさらされるか、修正されると信じよう。そして一般の我々もまた、知識を得て、粉飾の匂いを嗅ぎ取れるようになるしかない。

 いつか、正義が通る世の中になると信じながら・・・。

 そのときになれば、また海外の投資家も日本の株に投資してくれるようになるだろう。



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