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2008.11.09 Sunday

ジョブズはなぜ天才集団を作れたか

危機に強い会社の作り方

 この本を邦訳タイトル通りに読んでしまっては、この本から得られるものを半減させてしまうかもしれない。この本はなぜジョブズが人を育て、組織を作ってきたか、を説明している本ではない。

 原題は、The Apple Way。つまりは、アップルのやりかた、アップル流、というもの。アップルという会社がどのように考え、どのように振舞ってきたか、その企業文化と展開について、示唆してくれる本である。

 まあ、しかし、ひどい会社である。この本で書かれていることは、冗談ではないかと思えるようなめちゃくちゃな話ばかり。特に経営という面から見れば、会社の経営計画も事業戦略もなかったとか、社員がCEOをお飾りで、経営判断は自分でするものだと思っていたり、もっと言えば、会社ができたときにCEOがジョブズに定期的に風呂に入るように指示したり・・・。どんな会社ですか!と訊きたくもなるだろう。

 研究開発費が膨大で、とてつもなくすばらしい商品か、あるいはとんでもないどうしようもない商品を作り、売れればipodのように大成功。だめならとことん売れない。まさに博打のような商売の」スタイルだ。

 こんな会社がこんな経営をやっていては、生き残れるわけがない。

 しかし不思議と生き残っている。そんな会社だ。

 ただし、ひとつ思うことは、この会社で働くのは楽しそうだな、ということである。とはいえ、景気によってリストラされたり、また呼び戻されて復活したりと、そういうことは覚悟しなければならないだろうが、それでも、開発を担当する人間にとっては働き甲斐のある職場なのだろうな、と思うのである。

 そしてまた、唯一、ソフトもハードも手がけるコンピューターメーカーであり、直営ストアも持っているという強みから、マイクロソフトがやろうとしてもできなかった、パソコンから家電へのビジネス領域のシフトなんてことも、出来てしまう会社なのだろう、と思った。

 アップルの本を読んでいて、グーグルという会社と非常に被るところがあるな、と思った。この本からはipodの一連のアイデアが、どこから来たのかはわからない。ただ、ジョブズがずいぶんとソニーを意識して、ソニーのオフィスにもぐりこんでまで何かを盗もうとしていたように、クールな家電メーカーを目指していたところに、何かのヒントがあったのかもしれない。

 それはともかく、あるエピソードから、こういう聞き分けのない技術屋集団をうまく経営していくコツが読み取れるように思う。それは、アップル復活のきっかけともなった、imacの斬新なスケルトンのデザイン誕生のきっかけとなるエピソードである。

 それは、ある学校でimacの試作機をデモしようとしたときのこと。筐体が間に合わなかったので、間に合わせのプラスチックの透明な箱をかぶせたところ、研究者たちが興奮して騒いだととのこと。そこから、実際のimacも、半分、スケルトンのデザインで発売され、大ヒットした。

 しかもジョブズは、これがあたかもimacの根本思想を示すものであるかのように、語っていたというから、驚きだ。調子が良いというか、根っからのほら吹きなのか・・・。

 いい製品を作るのは当たり前。そこにクールなデザインと驚きを被せる。それをちょっと高い値段で売る。まさに過去にソニーがやっていたような仕事を、今のアップル社はやっていて、それが成功しているのだろう。

 最高のものを作る。それがアップルの開発の精神だという。常に反逆児のポジションを仕掛け、ファンを煽り、協働して成功を得る。あるいは大きな失敗を、小さな失敗で回避する。それがアップル社がつぶれなかった理由だし、顧客がはらはらし続けなければいけない理由でもある。ここにあるのは通常の企業顧客の関係ではなく、エンターティナーと観客の関係に近いかもしれない。

 いずれにしても、危機が日常茶飯事の会社、アップル。世界経済が危機を迎える中、この会社からもらえるヒントは結構、多いかもしれない。


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