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2004.12.26 Sunday

マツダはなぜ、よみがえったのか? ものづくり企業がブランドを再生するとき

MOTの議論に足りないもの、あります。


 私が最初にRX−8のストーリーを聞いたとき、それは合理化を求められて頓挫しかかったロータリーエンジンが頑張って復活した、というプロジェクトX的なストーリーだった。つまり理解のない経営陣に対抗して技術開発に成功した開発陣、という図式だ。しかしこの本を読んで、RX−8の成功が、そんな単純なお話に支えられているわけではないことがわかった。


 マツダ再生の物語。カルロス・ゴーンのような目立つ・よく喋る外国人がやってきて、華やかな目標を立てて強いリーダーシップで実現させていく。そういうストーリーでもない。そこにあるのは真面目で実直なビジネスマンと技術者たち。それがいつの間にか立ち直り、フォードグループの技術担当を担うまでに復活を果たした。その秘密はどこにあるのか?

 この本ではその秘密をRX−8誕生の物語として象徴的に語り、その背後にあるフォード社とマツダ再建の、経営的な物語を次に語り、最後に現社長井巻氏のインタビューで締めくくっている。自身、単なるマツダファンという著者だけあって、ファンブックのようなつくりではあるのは間違いないが、物語としてもビジネス書としても、期待していたよりも読ませ、考えさせられた。

 象徴的に言えば、RX−8がどうしてロータリーエンジンの4ドア4シーターのスポーツカーとして誕生したのか、ということである。これはどうしてもRX−7の後継車として、2ドア2シーターのスポーツカーを作りたかった技術陣と、技術力の高さを認めながら、売れる車を作らなくてはならないとする経営陣のせめぎあいの中から生まれてきたという。そういうと単純化されてしまうきらいがあるが、なぜ、フォード側は開発をストップさせたはずのロータリー・エンジンに最終的にGoサインを出したのか。この本のストーリー部分を読む限りでは、試乗してみたら気持ちよく乗れたから、というだけだが、この本の中盤を読むと、マツダの持てる技術力とブランドイメージが、フォードから送り込まれた経営側と、技術陣の間で共有されており、失敗しない限りはできるだけ技術陣の「技術」を尊重しようというフォード側のやり方が見えてくる。それはおそらく管理しないわけでもなく、「一緒になって売れるクルマを作っていこう」という、共有感つきでの技術経営の手法だった。このフォードの方法こそ、マツダを再生させたのだと思う。

 もちろん会社の大きさの問題もあるだろうが、ゴーンがスバルから中村氏を引き抜き、今のずんぐりむっくりした日産ブランドのイメージを作ったのとは対照的に、RX−8の最終的なデザインを担当した前田氏は、展示会で見た試作品のデザインを見て「これはまずい」と思い、意見書をチームに提出。その内容を見てチーフ・デザイナーに抜擢されたという。これもまた会社の雰囲気を醸し出すエピソードである。

 しかし著者も指摘するように、どうもマツダは宣伝が下手のようである。フォードグループにロータリーではなく普通のエンジンも供給するという話や、車体の自由度の斬新さなど、この本を読むまで全然知らなかった。また、フォードがどのようにして適材をマツダ再生のフェーズに合わせて派遣したのかも、全く初めて知った。

 著者の想いが通じて、この本がマツダの更なる飛躍に役立つことを祈りつつ、技術と経営の幸せな共存を考えるすべての人に、読んでもらいたい一冊である。


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