2005.11.27 Sunday
下流社会(光文社新書)新たな階層集団の出現
□1 年収が年齢の10倍未満だ
□2 その日その日を気楽に生きたいと思う
□3 自分らしく生きるのがよいと思う
□4 好きなことだけして生きたい
□5 面倒くさがり、だらしがない、出不精
□6 一人でいるのが好きだ
□7 地味で目立たない性格だ
□8 ファッションは自分流である
□9 食べることが面倒くさいと思うことがある
□10 お菓子やファーストフードをよく食べる
□11 一日中家でテレビゲームやインターネットをして過ごすことがある
□12 未婚である(男性で33歳以上、女性で30歳以上の方)
この本はここのところ続いている日本の階級の階層化についての論説をまとめたもので、結果、ベストセラーになっています。
実際、読んでみると、さまざまな数字や調査結果が引用されているけれども、あくまで著者が元アクロスの編集長として、世の中を観察していて見つけた現象を何とか論理的に実証しようという試みに見えます。「何々系」という分類も出てきますが、このあたりはいかにもマーケティング屋さん、という印象ですね。面白いけどMECEになっているのかは疑問です。
それでもこの本は買うべきです。面白いです。
この本のメインの主張は簡単に言うと、日本がいわゆる「一億総中流」から、「一億ほとんど下流」に向かっている、というお話。これも引用してみます。
「たとえば1960年代にテレビがない家庭は中流とは言い難かっただろう。しかし現在は下流でもDVDプレーヤーもパソコンも持っている。単にものの所有という点から見ると下流が絶対的に貧しいわけではない。」(P6)
確かに。でもこれはちょっと考えると恐ろしい時代が来ていることがわかる。物余りの時代を超えて、気づけば、身の回りに物があるだけでは人を評価できない時代。問題は、その「物」がどのくらいの価値があるのか、ということです。百円ショップや百円バーガー、ディスカウントショップに群がる人々は、気がつけば、「なんだ、頑張らなくても生きていけるんじゃん」という「下流」の罠に陥っているのかもしれません。
こうした時代の変化は、トヨタの戦略にも現れている、と著者は言ってい
ます。昔は「いつかはクラウン」でした。しかし、レクサスは「いつかはレ
クサス」ではありません。「レクサスに乗るステータス」を売っているから
です。
ではここで疑問。物のあるなしでは図れないとすると、何が「下流」を定義するのでしょう? 著者は見事にズバッと切ってくれています。
「では、「下流」には何が足りないのか。それは意欲である。中流であることに対する意欲のない人、そして中流から降りる人、あるいは落ちる人、それが「下流」だ。」(P6)
特に著者が否定的なのは、「自分らしく生きる」「好きなことをして生きる」という風潮。「成功する」とか「ステータスをあげる」「年収をあげる」ということと、前者とはまったく違います。あなたの価値観はどっち? そしてあなたの周囲の人の価値観は?
この本ではあまり触れられていませんが、よく考えると「下流」の価値観が形成されている人間関係(準拠集団)の中にいると、なかなか「中流」を目指すのが難しくなる、そんな世の中が来ているのでしょう。
遊びや癒しを求めず、成功に、目標に向かって頑張る。
こんな「勇気」が、あなたを下流への堕落から救ってくれます。「常識」が足をひっぱる時代は、すぐそこまで来ているのです。(aguni)