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2007.02.18 Sunday

子どもを伸ばす共育コーチング 子どもの本音と行動を引き出すコミュニケーション術

社員共育コーチングが、組織を救う

子どもを伸ばす共育コーチング
石川 尚子著
岸 英光監修
柘植書房新社
(2007.1)

 この本はビジネスコーチである著者が、教育の現場でのコーチングの実践をケーススタディ風に紹介したもの。ちなみにこの本の印税は教育の現場へのコーチングの普及に使うという。

 高校生の就職活動に向けたコーチングを、ふとしたきっかけで提案され、やってみた、というところから始まる。ところがこれが、所謂、普通のコーチングではない。

 「どんな仕事がしたいの?」「わかんない」
 「自分の長所は?」「わかんない」
 「さぁ・・・」
 「別に・・・」
 「わからない・・・」
 「微妙・・・」
 「普通・・・」

 とまあ、こんな感じ。でも、確かにコーチングが機能する、というのが石川コーチの話。しかし本当にやりたいことがないわけではなく、周りの大人の、ほんの何気ない言葉によって、そういう風になってしまっているだけなのだ。

 自分の意見を言うと否定され、夢を語ると夢見たいなことを言うな、と言われ、もっとマジメに考えろ、と言われる。この本で紹介されている例。声優になりたいという子。親はそんな夢みたいなことを、と思っている。もちろん、自分でもそれは理解している。しかし、その夢の話を受け止めて、いいね、と言ってくれたのは石川コーチだけだったのではないか。

 でも、これは別に高校生だけの話ではない、と読んでいて思った。いちばん思ったのは、自分が大学を卒業して初めて入社した会社で、私は自分の夢を語れただろうか、ということだ。

 入社時研修は外部講師が夢みたいな話をしただけだった。直属の上司は、こう決まっているからこうしなければダメだ、と怒ってばかりだった。あるいはエネルギーに満ち溢れた私の発言に手を焼いていた。そうしてだんだん、私はあまり話をしなくなった。思えば、それが最終的に、会社の外に自分の自己実現を求めた理由だったように思う。

 この本では石川コーチと子供達の会話がリアルに再現されている。その後ろから、石川コーチのコーチとしてのスタンスというものが透けてみえる。常に自主性を重んじる。決してブレない。人の欠点ではなく、良いところにのみ注目する。頑張っていない人なんかいない。自分を育てようとしていない人なんかいない。良くなりたいと思っていない人なんていない。

 そんな完全ポジティブ宣言の石川コーチの在り方を感じていると、人が人を育てるということの原点が、そこにあるような気がしてくる。

 冒頭、監修者の岸英光氏のコメントが寄せられている。ファシリテーターやコーチの世界での「養殖」モノと「天然」モノの違い、の話だ。コーチングもファシリテーションも、もともと自然にそういうコミュニケーションができる人のスキルを抽出し、暗黙知を形式知化して体系だてたもの。だから別に教育機関で訓練されなくても、できる人はいる。それが「天然」。一方、教育機関で一定のトレーニングをこなし、一定の判断基準の試験を受けて資格を取ったりした人、しかし、本当のセンスや在り方が身についていない人。これが「養殖」。こういう人によって、現場が混乱する、というのが、岸氏の指摘。

 石川コーチのスタンスは、「自己肯定感」を高めるコーチング。コーチングスキルがどーとかこーとか、タイプ分けがどーとかこーとか、そういう話ではない。そこにあるのは自分の在り方と、人間観、そして人との関わり方、それだけ。

 この考え方は企業の研修担当者の方、人事担当の方にとって、とてもはっとさせられるような考え方ではないかと思う。社員教育というと、教えるとか仕込むとかいうこと。その前提には、足りないスキル、未熟な経験、つまりはないもの、できないことにばかり目を向ける否定的なアプローチだ。

 この本はあくまで学校現場での話だが、就職活動コーチングの様子から、「社員共育」とでも言いたい人材育成の在り方の可能性を垣間見させてくれるように思う。あくまで肯定的なアプローチでの人材育成が、企業と社員との関係を、劇的に変えるかもしれない。

 教育現場の皆さんの他、全ての人材育成に関係する方、そして何よりコーチの皆さんに読んで欲しい一冊である。


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