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2006.11.19 Sunday

心のなかの幸福のバケツ 仕事と人生がうまくいくポジティブ心理学

ポジティブ心理学をわかりやすく説明してくれる一冊

心のなかの幸福のバケツ
トム・ラス著
ドナルド・O.クリフトン著
高遠 裕子訳
日本経済新聞社
(2005.5)

 企業の人材採用・適正テストの仕組みを開発し、日本では強みを見つけるストレングス・ファインダーで有名なギャロップ社。この本はそのストレングス・ファインダーの発明者にしてギャロップ社の元会長が、さらには全米心理学会から「ポジティブ心理学の祖父」と言われた彼が、最後に書きたいと言って残した一冊。とはいえ実際にこの本をまとめたのは孫。というのも、そのとき、既に彼は進行性の末期癌に侵されていたので、自分で執筆できなかったからだ。

 ポジティブ心理学というのが何かというと、人の精神の病気や問題点にクローズアップしていく従来の心理学に対して、気持ちが明るくなるとか楽しいとかそういう面に着目する、というもの。この本はその仕組みを「バケツとひしゃくの理論」で説明している。

 簡単なので要約を紹介しよう。

「人は誰でもバケツをもっている。
 バケツの水があふれているときが最高の状態だ。
 逆にバケツが空のときが最悪の状態だ。
 人はバケツのほかに、ひしゃくももっている。
 他人と接するときは、かならず、このひしゃくを使う。
 相手のバケツに水を注ぐ(相手が明るくなるようなことを言う)
 こともあれば、バケツから水をくみ出す(相手を傷つけるよう
 なことを言う)こともある。
 誰かのバケツに水を注げば、自分のバケツにも水がたまる。
 逆にひしゃくで相手のバケツの水をくみ出せば、
 自分のバケツの水も減る。」

 私もコーチとしてクライアントや仲間のコーチに接していて思うことは、目標達成や成果の獲得以前に、その人の基本的な部分がしっかりしている必要がある、ということだ。
 ファウンデーションが弱い人は、人の悪口や非難をしたり、何もかもつまらないと言い、人は皆、表面だけ親切な裏切り者で、自分を責めている、と思う。

 よくこういう人は親の愛情が足りないせい、と言うが、その理屈を説明してくれるのがこの「ひしゃくとバケツの理論」かな、と思う。つまりは、コミュニケーションによって人のパフォーマンスが変化する、というお話だ。

 人を傷つけるようなことを言うと、相手も傷つくが、自分も傷つく。人を明るく楽しくしてあげると、相手もハッピーだし、自分もハッピー。それだけの理論。しかしこれだけのことを、こういう志向を持っていない人にどうやって理解させるか、というところでこの「ひしゃくとバケツの理論」である。

 人に愛され、人を愛している人のパフォーマンスが高いのは、別に愛の力ではなくて、こういうポジティブなストロークによって力を得ているからなのだろう、と思う。うん? それを愛の力というのかもしれない。

 この本で紹介されているポジティブ心理学、何もこういうロマンチックな話ではない。たとえば、この本で紹介されているのは、「人が会社を辞める理由の第一位は自分が正当に評価されていないと思うから」というような話や、あるいは、「朝鮮戦争で米捕虜の死亡率が高かったのは、北朝鮮の心理作戦で、密告を奨励したり自己批判させたりして、ポジティブな感情を奪っていったから」などという恐ろしい例もある。ネガティブな感情は人の命をも奪うのだ。

 「生産性を考えるのなら、極端にネガティブな人には自宅にいてもらったほうがいい」(P26)という。逆に考えると、ネガティブな人からマイナスのエネルギーをもらうことを避ける結果、ネガティブな人は孤独になり、ますますネガティブになっていく。ネガティブのスパイラル、まさに悪循環である。

 では逆はどうか。ポジティブのスパイラル。これはいい人間関係に恵まれ、仕事も楽しく、家庭も幸せ。そういう光景が目に浮かぶ。であれば、こっちの方がいいよね。ということを、この本は考えさせてくれる。

 ただしご注意を。人間関係というものは、100%ポジティブでも駄目らしい。統計によると、夫婦のあいだで、ネガティブな言動1回に対してポジティブな言動が5回あれば、結婚生活は長続きする可能性が高いということだ。職場の人間関係でも、ネガティブな言動1回に対してポジティブな言動が13回を超えると、逆に生産性が落ちるという。

 あなたの家庭や職場の比率はどうなっていますか? 朝の会話や会議の場などで、メモの端に正の字を書いて調査してみても面白いかもしれません。ただし、結果は自己責任で・・・。

 いずれにしても、この本が末期癌の病床から生まれたとはとても信じられない。何かに悩んでいる誰かに、プレゼントしたくなる一冊です。


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